今年の東京の夏は暑い!暑い暑いと文句を言わずに過ごそうと決心した6月初旬。しかしもう限界。大暑を過ぎてもこの暑さ。気晴らしに、なんとなく心が涼やかな俳人は、暑さをどのように表現したのかと思い、暑さを感じる句を探してみました。
芭蕉の頃は、今より暑くなかったと思います。暑い夏の蝉の声から現実を超える「閑さ」を感じ、心の平安を保っていいと叫びながらの今回のブログ。皆様にさらなる暑さが伝染したら、すみません。
みちのくに住みし酷暑を路地深く 南部静季
都会では 不機嫌な顔で酷暑の信号を待つ 吉岡英子
俳句心のない私には、直截(ちょくせつ)的な表現のほうが受け入れやすく、納得!
新聞では、室内での熱中症による死亡が時折報道されています。そのたびにとても寂しく、悲しい思いで胸いっぱいになります。
武器もなく人が死にゆく猛暑かな 初霜若葉
先日近くのデパートに行きました。すると主に高齢の方々が、デパート中のありとあらゆる椅子に座っている光景を目にし、大変驚きました。デパートの避暑地的利用はこれほどかと。しかし思い返すと、連日の極暑。電気代の節約のみならず体力維持・夏バテ防止に妙案と納得しました。ただ、雑誌を読んでいる人、スマホを見ている人は少数で、殆どの方々は所在なげに(古語では徒然なるままに?)過ごされております。そして三分の一ほどは、仮眠中。会話をされている方はほぼ皆無でした。場所がデパートなので無理もないことですが。例えば地区会館のようなところで、友人や近所の顔見知りの仲間が集い、時間を気にしないでおしゃべりしたり飲食したりできたら、多くの人々に喜ばれるのではないかと思いました。(言わずもがなですが、他の人との楽しい会話は、認知機能の向上には大変効果的です。)
さて究極の暑さを表現している句を更に調べていたら、清水哲男氏が「俳句αあるふぁ」1999年6~7月号で解説されていた句を見つけました。清水氏は詩人で俳句にも造詣の深かった方です。
あなただあれなどと母いふ暑さかな 竹内 立(第4回「俳句αあるふぁ」年間賞受賞作(塩田丸男選))
清水氏の鑑賞文を引用させていただきます。
とにかく暑い。そこへもってきて、母親が何度も「あなただあれ」などと問いかける。ますます暑苦しい。しかしこの暑さも母親のボケも、どうなるものでもない。じっと耐えるしかない。脂汗までが浮いてくるようだ。
作者 竹内氏は71歳。老々介護の状態であったと思われます。外からの暑さと、こころから滲み出てくる低温やけどの暑さのハイブリッド、異質の暑さの混成、これが今夏見つけた、究極の暑さを表現した俳句のようです。
暑さに負けずに、いっぱいおしゃべりしてくださいね。
(naka)