今回は難聴についてのお話をしましょう。
認知症の危険因子や治療・ケアの知識、予防・管理等に係わる知見をまとめている国際的な機関 ランセット委員会があります。このランセット委員会の報告によると認知症危険因子として「難聴」が挙げられています。教育歴(教育期間の短さ)に次いで最も大きな影響を有する因子とされています。
難聴には、色々な原因はありますが、ここでは「加齢性難聴(老人性難聴)」についてお伝えします。
加齢性難聴(老人性難聴)
加齢性難聴は、言葉の通り加齢によってもたらされます。
そもそも、ヒトは音をどのように感じ取っているのでしょうか。
音は、外耳から中耳まで空気の振動として伝わってきて、内耳にある「蝸牛」というカタツムリのような、らせん状の器官に入ります。音を感受するのが蝸牛内部に約15,000個(片耳)ほどある「有毛細胞」です。その名の通り「感覚毛」という細い毛のような束を有しています。音の信号が蝸牛に伝わり、感覚毛が揺れて興奮し、音を電気信号に変換します。この電気信号が脳に到達すると音が聞こえる仕組みになっています。
有毛細胞が、加齢や騒音の影響などで傷つき、壊れてしまうと、音を感じ取りにくくなり難聴を引き起こします。有毛細胞はいったん壊れてしまうともとには戻りません。(厚労省ホームページ)
年齢とともに、音は聞こえにくくなります。通常は高い音(4~8kHz)から聞こえにくくなります。最初の頃はあまり聞こえにくさを自覚することはありません。一般的に40~50代から始まり60歳を過ぎる頃から急速に進むと考えられています。
加齢性難聴の症状の特徴として、次のようなことが挙げられます。
・高い音が聞こえにくくなる
・言葉の聞き分けが難しくなってくる
・様々な雑音の中で聴きたい音を選択できなくなる
そもそも人の発する言葉には様々な周波数の音が混ざり合っています。そのため、たとえ大きな音量の声で話しても高い周波数の言葉は抜けて脱落します。その結果、聞き取りが難しくなります。また、自分の声の大きさも分からなくなるので、つい大声で話したり、怒鳴ったりするようになることがあります。
ランセット委員会が、難聴を重大な認知症の危険因子としてとらえている理由は、聞こえにくくなるというこれらの症状が認知機能の維持に大きな障害になるからだと考えられます。
難聴に起因する弊害をいくつか挙げてみます。
・会話による人とのコミュニケーションがおっくうになる
・他人を理解する機会が減少すると同時に、自分を理解してもらう機会も減少する
・家族や他人との新たな経験や共同体験が著しく減少する。それに伴いより孤独感が深まり鬱状態に入っていく
耳から入る情報が減少すると、脳への刺激も著しく減少します。認知機能の衰え、脳の老化がいっそう加速されることになると思われます。
次のようなことが増えてきたら、加齢性難聴を意識してください。
・テレビの音量が大きくなってきた
・外に出ることが減ってきた
・聞き返すことが増えてきた
・ものを探すことが増えてきた(認知機能の衰えにもよる)
現在の医学では、加齢性難聴は認知症と同様に完全治癒することはなく、進行を遅らせることしかできないと言われています。
騒音による「音響外傷」から逃げ回りましょう。
工事現場のみならず、一緒に住んでいる家族のテレビの音響が大きいことも難聴になりやすくなります。
イヤホンを継続的に利用することも注意が必要です。携帯音響機器の進化や、スマホの浸透により、四六時中音楽を聴いている人、激しい大音量のコンサートに身をゆだねている方は間違いなく有毛細胞を殺し続けています。将来の難聴候補者であることは疑う余地がありません。
糖尿病、高血圧にも十分注意してください。適度の有酸素運動で血流を良くしましょう。
耳の聞こえの改善に役に立つ食物もご紹介します。
耳の聞こえの改善に役立つ
・ビタミンB1(豚肉、豆類など)
・ビタミンE(大豆、卵、アボカドなど)
細胞の再生に効果があるといわれている
ビタミンB2(レバー、納豆、牛乳など)
積極的に食事を通して取り入れられることをお勧めします。
人間が健康に生きていくためには、脳の働き、身体の動きも必須です。加えて視覚、嗅覚、聴覚いずれも正常に働くよう普段から気を配りたいものです。そして「いつまでも笑顔の生き活きライフ」を楽しみましょう!!!
(naka)