皆様は、年金制度をどのくらい意識していらっしゃるでしょうか?今年2022年4月の年金制度改正法により大きく変わりました。
その改正の目的として、表向きには
- 少子高齢化が深刻になり労働人口の減少に備えるために、国民にこれまで以上に働く形態は異なっても長い期間働いてほしい。
- そのために、高齢期の経済基盤の充実のために、年金制度の対象を拡大し年金受給額の確保・充実化を図りたい。
ということかと思います。しかし本音をいえば、
年金の支払いを少しでも後ろにずらしたい、ということで、そしてそのことが、
「きれいな形での公的年金会計問題の先送り」ではないかという気がします。
年金制度は、私どもにとって身近なものですが、実際のところ制度をキチンと理解している国民は極めて稀有な存在でないかと思うくらい複雑怪奇なものです。今回は、この年金制度によりいつ受給を開始するのが適当か、考えてみたいと思います。
今回の主な改正は次の4点です。
①被用者保険における適用範囲の拡大
②在職中における年金受給の仕組みの見直し
③受給開始時期における選択肢の拡大
④確定供出年金における加入可能要件の見直し
それぞれ一つずつひも解いて理解しなければならない、多方面にわたる改訂ですが、今回は、③について述べてみたいと思います。
受給開始時期における選択肢の拡大
今回の改正で公的年金の受給開始が75歳まで繰り下げることが可能になりました。従来は、65歳を基準として、60歳まで繰り上げ、70歳まで繰り下げが可能でした。そして、受給開始のタイミングで、1か月繰り上げると、1か月ごとに0.4%減額になり1か月繰り下げるごとに0.7%増額になります。ということは、60歳から受給すると、24%(0.4%×12か月×5年)減額され、75歳で受給を始めると84%(0.7%×12か月10年)増額されることになります。表にまとめてみますと表1の通りです。
表1 年金受給開始繰り上げ・繰り下げの増減率
繰り上げ | 基準年 | 繰り下げ | ||||||||||||||
受給開始年齢 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | 66 | 67 | 68 | 69 | 70 | 71 | 72 | 73 | 74 | 75 |
受給額増減率 | △24 | △19.2 | △14.4 | △9.6 | △4.8 | ±0 | 8.4 | 16.8 | 25.2 | 33.6 | 42.0 | 50.4 | 58.8 | 67.2 | 75.6 | 84.0 |
この表を見て、短絡的に75歳まで繰り下げて84%増しの金額が貰うのが一番いいとお考えの方はいらっしゃらないと思いますが、ではどのようにすればいいのかというのが、大きな決断を伴うことになります。その前に65歳で受給する場合を「100」として60歳、70歳、75歳受給開始の場合の損益分岐点を出しますと、それぞれ80歳、81歳、86歳になり、75歳受給開始で86歳以上生き続けるケースが最大金額を受け取ることが出来ます。
ここで考えなければいけない大事なことがあります。寿命です。自分の寿命で、シナリオが変わります。日本人の平均寿命や何歳で死亡しているかは、一人一人の個人には全く関係ありません。ちなみに年齢別死亡者数は、男性の場合83歳ころから88歳あたり、女性では90歳前後が最も多くなっています。
では、男性ならば88歳、女性ならば90歳まで生きるので(生きる自信があるので)、最大限の金額をもらえるから、75歳まで繰り下げて受給しよう。と考えるのは賢明な判断か?
私の意見は、元気と蓄えと何歳まで働くかによると考えます。
60歳定年の方で、まだ元気な方は、多分65歳~67歳
60歳定年の方で、健康に自信がない方は、61歳~
65歳定年の方で、健康に少し不安がある方は、65歳~66歳
蓄えが沢山ある方は、基本的に「気にしない」。
お孫さんが幼少期から小学生の間に、年金が入るように受給開始する。
お金を使う喜びや、楽しさを実感できる時代に受給開始する。
大事なことは三つ。
一つ目は、年金受給額だけでは生活ができないことを、しっかり認知しておくこと。
二つ目は、自分の身体であっても、寿命はなかなか自分では決められないこと。
三つ目は、国の制度は分かり辛いだけでなく、何か変更しようとするときには、例外なく裏のシナリオがあることを忘れずに!!
(naka)