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認知機能回復にカマンベールチーズ?

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認知機能にまつわるといえば、こんな話題もありました。

まずはチーズのお話から。

「アルツハイマー病を予防できる可能性―カマンベールチーズに原因物質の沈着を抑える成分を発見」

2015年3月にプレス発表された内容です。

東京大学中山裕之教授らのグループ、キリン基礎技術研究所、小岩井乳業研究所の三者によって行われました。アルツハイマー病の症状を再現したマウスにチーズから調整した飼料を3か月間摂取させました。そうすると、脳内で、アルツハイマー病の発症に深くかかわると最近有名になっているアミロイドベータの沈着が抑制されたというニュースでした。

 

また、チーズ製造時に用いられる白カビで発酵させた乳からは、脳内での異物排除に大きな役割を担っているミクログリア(注1)のアミロイドベータを除去する機能を高める物質、抗炎症活性を促進する物質(オレイン酸アミドとデヒドロエルゴステロール)を突き止めることに成功したと発表しました。さらにアミロイドベータ沈着に伴い産生される炎症性の細胞間の情報伝達を担っているタンパク質(炎症性サイトカイン、ケモカイン)の量も有意に減少したそうです。そしてアミロイドベータの沈着に伴い低下する海馬の神経栄養因子(BDNF(注3))の量は、有意に増加することが発見されました。

しかしながら、この続報はなかなか発表されませんでした。するとまったく異なるグループから吉報が届きました。

“世界初”ヒト試験でカマンベールチーズ摂取による認知症予防の可能性を示唆

「軽度認知障害の高齢者においてカマンベールチーズ摂取によるBDNF(脳由来神経栄養因子)上昇を確認」

2019年11月、桜美林大学、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター、株式会社明治の三者による大々的なプレスリリースがなされました。

 

都内居住70歳以上の女性で、軽度認知障害(MCI)と判断された71人(689人対象から判断)に、ランダム化クロスオーバー比較試験(注2)がなされました。カマンベールチーズと通常のプロセスチーズを1日33.4g(市販6P入りの内2P)3か月間毎日食べてもらい、次の3か月間は、影響が残らないように食べない3か月をおきます。その次の3か月間は、食べるものをグループごと入れ替えます。その結果は、カマンベールを食べたグループは、血中BDNF(注3)の値が約6%増加、一方プロセスチーズのグループは2%減少する濃度の変化が有意に高い結果が出ました。

この臨床試験は、前の研究グループのマウスを使った研究を進化させて、ヒトに対する臨床試験を行い、十分な成果が出されたものと思います。

しかしながら、カマンベールチーズを食べることはできるのですが、今のところサプリメントにも薬にもなっていません。今話題のエーザイ・バイオジェン開発のレカネマブ(商品名レケンビ)のアミロイドベータを減らす効果が、脳出血や浮腫などの様々な有害事象(副作用)を伴うとされているのに比べれば、カマンベールチーズのアミロイドベータ除去機能の研究をさらに深化させると至極面白いのではないかと、素人には思われるのですが、何が障害なのでしょうかね? 脂質の摂りすぎに注意して、前回のワインでもいただくと、アルツハイマー病の心配が、どっかに飛んでいきそうな気がして。―――飲みすぎ厳禁だよ‼‼

(注1)ミクログリア:血液の中では白血球が免疫系の代表的な細胞ですが、脳内ではミクログリアが免疫防御を担っています。グリア細胞の一種で、異物の除去、神経突起の修復などに関与しています。(グリア細胞は脳内で神経細胞以外の細胞)

(注2)ランダム化クロスオーバー比較試験:研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分け(ランダム化)、同一被験者にウォシュアウト期間を挟んで、時期を変えて異なる薬物を飲んでもらい有効性や安全性を比較検討する試験。被験者も研究者・医者も振り分けられるグループを選べないし、研究終了までどのグループに誰が入っているかわかりません。

(注3)BDNF:神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進などの神経細胞の成長を調節する脳細胞の増加には不可欠な神経系の液性タンパク質です。脳の中ではBDNFは、海馬、大脳皮質、大脳基底核で活性化されています。(Wikipedia参照)

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