認知症関連

ハブ毒でアルツハイマー治療に期待

投稿日:2023年10月20日 更新日:

既にお読みになられましたか? 毒蛇ハブの毒に含まれる酵素が認知症原因物質といわれているアミロイドベータを分解するという東北大学などのグループで行われている研究発表の記事。

 

今から5年前の2018年7月にハブの毒液の全ゲノム(注1)が解読されたという記事が発表されました。その記憶がかすかに残っておりましたので、大変興味深く今回のプレスリリース記事を読みました。というのもハブの毒液のゲノム解読、毒液関連遺伝子群が進化し多様化してきた過程の解明が、この先どのような研究につながるか想像できなかったまま、頭の中に置いてきぼり状態だったからです。

 

それがなんと、私の仕事にもゆかりが深いアルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドベータを分解するかも知れないというこの度の研究成果の発表に驚かされるとともに、大変嬉しく思いました。9月にエーザイと米国バイオジェンによって発明、製造されたレカネマブ(商品名:レケンビ)が日本でも承認されました。それと同様に、アミロイドベータを除去・分解することが観察されたという素晴らしい世界初の発見だということで、まさに“BRAVO!”です。

 

記事によると、ハブ毒は、11種類のメタロプロテアーゼ(注2)を含む成分によって構成され、「タンパク質のカクテル」といわれるそうです。ヒトに元来備わっている酵素がアミロイドベータを分解していることから、この酵素と構造が似ていて、共通の祖先から進化したと考えられる9種類の蛇毒メタロプロテアーゼを取り出し、「特製カクテル」を作成。このカクテルは、アミロイドベータを分解するだけでなく、アミロイドベータの産生も大幅に低下させたということです。

 

全ゲノム解読から5年の歳月をかけ研究をここまで深化されてきたことにただただ頭が下がる思いです。日本発のアルツハイマーの対処薬でなく、根本治療薬を目指していただく研究にエールを送りたいと思います。

 

それにしても、生物の毒素がアミロイドベータに効果をもたらすという事実の発見が、様々なアプローチをしている研究者にも、あとは大きな影響を与えると考えると、あとはスピードですね。

 

(注1):ゲノム(genome)とは、gene(遺伝子)と集合を表す-omeを組み合わせた言葉で、遺伝子(遺伝情報)の全体をさす言葉です。ヒトゲノムのDNA(デオキシリボ核酸、ゲノムを構成しており生物の遺伝情報を保持している鎖状の高分子)の文字列は32億文字列(塩基対)あり、そのうちの、タンパク質の部分を遺伝子とよんでいます。ヒトゲノムには約23,000個の遺伝子が含まれています。ハブでは約25,000個の遺伝子があります。

(注2):メタロプロテアーゼとは、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の一種で、酵素活性中心に金属イオンが結合することからこのように呼ばれる。すなわちコラーゲンなど組織の細胞間に通常みられるタンパクを分解する酵素の一種で、酵素の働きが正常に機能するために亜鉛やカルシウムなどの金属原子が必要になることからこの名称がつけられた。

 

プレスリリース本文
tohokuuniv_press0831_03web_habu.pdf

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