和漢薬のちから(その2)
認知症対策として期待される和漢薬
高齢化が進む中、平均寿命と健康寿命の差を縮めて、元気で長生きしたいと誰もが思うものです。それには身体が元気であることと共に、脳も元気で活動し続ける必要があります。
脳の衰えとして多くの人が直面するのが物忘れです。
軽い物忘れの状態から、軽度認知障害、認知症へと進んでしまう場合があります。認知症や認知症予備軍の人数は年々増え続けており、とどまる様子はありません。
認知症の多くはアルツハイマー病によるもので、それに対して処方される薬剤はいくつかありますが、いずれも対症療法的な役割にとどまっています。病状が進めば効きにくくなりますし、認知症を治すには至りません。
このような現状で、認知症の予防や治療に効果的な方法が見出されることが切望されています。様々な取り組み、研究が進められている中で、実は和漢薬の中にも、アルツハイマー病の症状を改善するような可能性を持つものがいくつか見出されています。
漢方薬では、
帰脾湯(きひとう)、
加味帰脾湯(かみきひとう)、
人参養栄湯(にんじんようえいとう)、
八味地黄丸(はちみじおうがん)
について、アルツハイマー病の認知機能が良くなることを示す臨床研究が報告されています。
また、抑肝散(よくかんさん)
はアルツハイマー病の周辺症状とよばれる、興奮、幻覚、徘徊、不安などをよくコントロールできることが知られています。
東田 千尋(とうだ ちひろ) 教授
富山大学和漢医薬学総合研究所神経機能学領域 薬学博士
和漢薬や漢方薬の秘めたる力をテーマに20年以上にわたり、認知症の予防、改善につながる研究を行う。
出典 クレールライフ2020年冬・春号 東急不動産株式会社 発行