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認知症根本治療への扉が開かれたのか?(新薬アデュカヌマブ)

投稿日:2021年8月21日 更新日:

アミロイドβ抗体「ADUHELM」(一般名アデュカヌマブ)

2021年6月7日アメリカ食品医薬品局(FDA)の迅速承認を取得した、エーザイ株式会社と米国バイオジェンが共同開発した、アミロイドβ抗体「ADUHELM」(一般名、アデュカヌマブ)については耳にした方も多いのではないかと思います。

 

エーザイ株式会社 代表執行役CEO 内藤晴夫氏は、

「認知症治療薬アリセプトの承認から25年。ようやく、疾患の原因と考えられるアルツハイマー病の病理に作用する最初の治療薬に至ることができ、感無量の思いです。」

と記者会見で述べられていました。

 

 

 

それから約2か月半が過ぎました。

 

「果たして当事者は今も感無量であろうか?」
天邪鬼(あまのじゃく)ッ気が少々ある、性格の悪い私は、アメリカでの評判の推移をたどってみました。

 

そもそも、発表時点から、コストの面に問題があると指摘されていました。アメリカでのコストは、週1回の点滴投与で年約56,000ドル(日本円で約610万円)と言われています。この金額は考えようによって評価は変わりますね。

更に有識者の間では、アルツハイマー病の進行を遅らせるだけでなく、根本的な原因に作用する初めての薬とされているが、実は明確な治療効果が認められていないという指摘が多くありました。

「ADUHELM」はアミロイドβを取り除く効果(用量、投与期間によって異なるが59%~71%)があると報告されています。アミロイドβを取り除く効果ということであれば、今までにも同じような作用を持つ薬はありました。しかし臨床的な効果が確認できないということでした。そして「ADUHELM」も同じではないか。すなわち、「ADUHELM」も従来の薬と同様に、患者の思考能力、認知機能の改善効果が確認できないということが指摘されていたのです。

 

 

 

クリーブランドクリニック(米 オハイオ州)

クリーブランドクリニック(米 オハイオ州)

7月に入り、いくつかの大きな動きが出てまいりました。

  1. FDAによる認可過程において、FDAとバイオジェンの関係に疑問があると、保健福祉省の監査官による調査が行われることが発表されました。
  2. 米国医療技術評価機関(ICER)(非営利)が、
    現時点でのエビデンスでは、認知症の進行を遅らせる効果があるか判定するには不十分であり、中等度アルツハイマー患者が治療に伴う健康上のリスクを凌ぐ効果、恩恵が得られることを示す十分なエビデンスはないと発表しました。
  3. メディケア・プランを提供する民間の医療保険会社が、
    十分なデータに基づく保険適用基準は、まだ満たされておらず、メディケアからの情報を待っていると発表しました。

 

これらの発表を受けて、三つの大病院が当面の間、認知症患者への投与を留保する考えを明らかにしました。

知る人ぞ知る、米国オハイオ州クリーブランドにあり全米だけでなく全世界においても常にすべての分野でトップの一つにランクされる病院システムであるクリーブランドクリニック(NPO)(ご興味があれば、https://en.wikipedia.org/wiki/Cleveland_Clinic)、

米国内有数の病院システムであるニューヨークのマウント・サイナイ・ヘルス・システム、

そしてワシントン州のプロビデンス病院です。

 

 

根本治療の扉の議論のはるか手前に、新たにいくつかの壁が築かれた気がするくらいの、それこそ重い事実が重なってきたような気がします。

 

今後も見守ってまいります。

 

(naka)

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